天才 勝新太郎
文春新書
「座頭市」と豪快な勝新伝説で知られる勝新太郎。本書は映画製作者としての勝とその凄まじい現場をスタッフの証言を元に再現し、繊細すぎる実像を浮き彫りにする。純粋さが加速させる狂気のノンフィクション。
勝新太郎といえば、「座頭市」そして豪快な勝新伝説の数々を連想される方が多いでしょう。映画監督・製作者としての勝新太郎を、彼を支えたスタッフへの丹念な取材を通して描いたこの本を読まれる方は、世間で喧伝(けんでん)されている姿とはかけ離れた繊細すぎる実像に驚かれると思います。著者は弱冠32歳ですが、時代劇への深い造詣と取材量、熱い想いは他者の追随を許しません。勝を近くで見てきた人たちの証言は生々しく、凄まじく、黒澤明監督との決裂の真相など、純粋さが加速させる狂気と悲劇にただ圧倒されます。全身芸術家として生きた天才の内面に肉薄した1冊です。〈ISBN〉9784166607358
- 序/3
- 第一章 神が天井から降りてくる──映像作家・勝新太郎/11
- 冬の海
- 演出風景の録音テープ
- 即興の一人芝居
- ある少女の死
- とめどなく溢れるアイディア
- 混沌の制作現場
- 第二章 負けてたまるか 映画スター・勝新太郎の誕生/33
- 「御簾」の裏側
- 屈辱の映画デビュー
- 数合わせの主演作
- 役者としての目覚め
- この芝居は雷蔵には出来ない!
- 『悪名』の誕生
- 宿命の出会い、『座頭市物語』
- 恐怖を感じる宇宙
- 第三章 勝プロダクションの設立/69
- 勝と市の快進撃
- 座頭市のサービス精神
- 世界最高峰の技術者たち
- 仲間たちと共に
- 勝プロダクション設立
- 第一回作の失敗
- 勅使河原宏との出会い
- 創作者への目覚め
- 『人斬り』大ヒット
- ブルース・リーとの幻の共演
- 座頭市vs用心棒
- 険悪な現場
- 大映の落日
- 雷蔵の死
- 初監督を決意
- 『顔役』衝撃の勝演出
- 究極のホンモノ志向
- 編集の技術をマスター
- 大映から東宝へ
- 『子連れ狼』の大ヒット
- 「悪魔の構図」
- 若山富三郎の離脱
- 高倉健出演『無宿』の失敗
- 第四章 オレは座頭市だ──『新・座頭市』/143
- 座頭市、テレビへ
- 勝新太郎一家
- 「そんなのはトゥーマッチだ
- 脚本なんて、いらない
- 雪の中の心中
- 妥協なき撮影の負担
- オレを忘れていないか!
- オレが座頭市だ
- 混沌の脚本作り
- 「座頭市はそんなことはしない」
- 二人の監督への敬意
- 座頭市のいない「座頭市」
- 見えない明日
- 「それならCMをカットしろ」
- 役者狂想曲
- 錚々たる役者たちが出演を希望
- 座頭市の女たち
- 母への思い
- 止まらない赤字
- 神が降りてきた
- 座頭市の最終回
- 目をつぶしてくれ!
- 第五章 神が降りてこない……/215
- 黒澤明からの使者
- 『影武者』順調なスタート
- 不穏な空気
- 異様な光景
- 降りてもらいます
- 勝主演の刑事ドラマを
- トラブルメーカー
- 声が聞こえない
- 消えた勝新太郎
- 勝プロ倒産
- 玉緒はプロだよ
- 天下人を演じる
- 勝カメラ
- 全ては勝のために
- 最後の座頭市
- いつものスタッフがいない現場
- 緒形が好きだから斬れない
- コミュニケーション不在
- 死亡事故
- 息子を人殺しにしてしまった
- 血と狂気の完成
- 裏切り
- 「勝新太郎」という呪縛
- 孤独な道化芝居
- 神が降りてこない
- 最後の演出
- あとがき/294
- 参考文献/301