ニュータウン再生 引き潮時代のタウンマネジメント
(
秋元 孝夫 )
◆本書は先に上梓した「ニュータウンの未来」の姉妹本である。前著は、とりわけ誤解の多い多摩ニュータウンを客観的に知っていただくために、「コミュニティ・都市環境・経済社会」に関わる諸事情を具体的に紹介したものだが、本編は今後の引き潮の時代にあるべき市民活動や地域の再編など具体的なニュータウンの再生に向けた手法や、すでに動き始めている都市再編や今後の求められる再生手法について詳述し、引き潮社会の中で進むべき方向を導き出したものである。
◆戦後の上げ潮経済がもたらしたニュータウン開発に注ぎ込まれた都市のストックが、満潮期を迎えて引き潮に向かいつつある現在、あなたの地域が今後共、引き潮社会の中で如何に活性化して生き残っていくかは、地域社会の舵取りに掛かっている。その鍵を握るのは行政ではなく市民である。(「まえがき」より)
◆なお、収録されたデータ等が少しばかり古くなっていますが、多摩ニュータウンを知る一助となれば幸いです。
目次
まえがき
まちづくりの原点
上げ潮経済と引き潮経済
引き潮社会の意味
ニュータウンの未来
第一章 ニュータウン計画を知る
一 海外のニュータウンを学ぶ
ニュータウンの原点を見る
ロンドン郊外のニュータウン開発
パリ郊外のニュータウン開発
二 日本のニュータウンを知る
ニュータウン開発の過去と未来
戦後最初の大規模ニュータウン
地方都市のニュータウン
日本最大のニュータウン
三 ニュータウンのこれから
ニュータウンの資産
ニュータウンの知的財産
生活圏と行政界の谷間で
多摩ニュータウンから未来を占う
四 ニュータウンを取り巻く背景
都市の盛衰
ニュータウン衰退のシナリオ
二〇〇七年問題
二地域居住
第二章 多摩ニュータウン開発の記憶
一 生活者の多摩ニュータウン開発
多摩ニュータウン開拓の第一歩
最初の住宅供給
求められる住まいの規模
バブル経済期の住宅供給
多摩ニュータウンの住宅供給
二 日本経済と多摩ニュータウン
バブル経済崩壊以降の住宅事情
住宅バブルの裏側
住宅ローンの怖い金利
都市と空き家事情
三 大規模開発の不幸
土地利用計画がまちを滅ぼす
やりすぎた街区構成
大規模マンション開発を占う
計画規模と実態人口のずれ
四 多摩ニュータウンの推移
まだら模様の人口の実態
土地処分とマンションラッシュ
産学との連携
自治体の横の繋がり
五 住宅ストックの更新と新規供給
多摩市の住宅供給の状況
多摩市のマンション供給の今後
捨てるより活かす
団地再生の動き
第三章 多摩ニュータウンの暮らしを解く
一 住民参加の仕掛けを育てる
顔の見える団地と顔の見えないマンション
中層住宅にエレベーターを設置する
高齢化を恐れない団地づくり
多摩ニュータウン全体の組織化を
二 住み続けるために
マイナスをプラスにする
住み続けられる都市
生まれそして死ぬこと
三 マンション管理を見直す
戸建て住宅とマンションの管理
団地・マンションの管理経費
マンションの価値観が変わる
大規模瑕疵の発生と経過
第四章 多摩ニュータウンの未来を読む
一 未来予測の視点
都市の骨格を見直す
最初の開発地、多摩市の未来
多摩ニュータウンの合併はあるか
二 マンションブームの顛末
多摩ニュータウンのマンションブーム
中古マンション活用の動き
多摩ニュータウン衰退の筋書き
多摩ニュータウンの明るい未来
三 ホットスポットにする方法
建物の構造は一〇〇年持つ
都市基盤が建物を守る
地域間戦争に勝つ
コールドスポットをホットスポットに
四 住まいの循環を推進する
新しい住まいの循環
住宅ストックを活用した循環
資産を生かした経済の循環
第五章 再生のシナリオ
一 まちづくりに参加する
人を集める仕掛け
住まいを守る
住み続ける為の住まいづくり
二 まちの資産は、まちづくりの宝
まちの資産を活かす
公的賃貸住宅を活かす方法
公営住宅のリノベーション
三 多摩ニュータウンを住宅特区に
住宅ストックを活かす
高齢者の為の住まいづくり
コンバージョン
住まいを繋ぐ
四 とにかく実践から始める
多摩ニュータウンのまちづくり活動
「多摩ニュータウン・まちづくり専門家会議」の役割
ニュータウンを復活させる
おわりに
本書の役割
ニュータウン問題を語ろう
ニュータウン共通の課題
まちづくりの主役