商店街再生の罠
――売りたいモノから、顧客がしたいコトへ
(
久繁 哲之介 )
◆「大型店に客を奪われた」というのは、幻想である。商店街衰退の本当の理由は、「成功例」を模倣する公務員と、意欲の低い商店主にあった。レトロ商店街、キャラクター商店街、B級グルメ商店街、シェア起業、スローフード、民間図書館など数々の事例から、商店街衰退を引き起こす「罠」を見つけ出し、再生へのヒントを提示する。
目次
はじめに
第1章 レトロ商店街の罠
レトロ商店街は公共事業の口実?
ケース① 観光地化に走り、地域密着を捨てた結果、地元客は大型店を選んだ 大分県豊後高田市レトロ商店街
新横浜ラーメン博物館を模倣したレトロ商店街
視察と勉強会は、正しい目的と視点が必要
まるで、シャッター商店街やね
商店街内の格差──レトロ商店街で利益を得るのは、一部の店だけ
評価軸の選びが成否を分ける
まちおこしと、商店街活性化は評価軸が違う
地元客のニーズに応えているのは、大型店
「大型店に客を奪われた」論のウソ
地域密着が、商店街再生の鍵
ケース② 自動車優先で、人が歩けないレトロ商店街 大分県日田市豆田町商店街
美しい国と言うけど、やっぱり公共事業?
公共事業投資を活発化したのに、観光客数が34%も減少
人より自動車を優先する商店街は必ず衰退する
商店街商店街と野菜直売所は戦略的に、自動販売機を置かない
日田市長への意見書
自治体は、権威の言いなり
ケース③ 日曜は定休日で4割の店が閉まっているレトロ商店街 東京都江東区亀戸香取勝運商店街
観光施設なのに、日曜日が定休日の理由
自治体は補助金を出すなら、運営に責任をもて!
自治体固有の風土
補助金づけが商店主の行政依存を誘発
第2章 キャラクター商店街の罠
テーマパーク商店街の競合は、ディズニーランド
ケース④ 本物の成功事例は、学びの宝庫 鳥取県境港市水木しげるロード
成功した結果の表面でなく、進化の過程を視る
始まりは、安全で魅力ある歩道づくり
首長が役所を変える
「やる気のある地域、できる部分」から始める
長期化を覚悟、自ら働き、協力者へ貢献
キャラクタの再生に何度も助けられた幸運
キャラクターに依存するリスク
商店街問題は、個店が解決すべき問題から着手
地域経済循環率を高める商品開発
商売の意欲とセンスが高いリーダーが、商店主を鼓舞!
ケース⑤ テーマパーク商店街で一番になれないなら、地域一番店になる! 鳥取県北栄町コナン通り、東京都品川区戸越銀座商店街
キャラクター商店街は、プロダクションが監修するテーマパーク
プロダクションの監修はコンサルティング
「コナン通り」との相乗集客、比較勝利、一人勝ちへ
テーマで一番になるか、地域一番店になる
「動けない銅像」から「顧客と交流できる着ぐるみ」へ
地方自治で最高の成功事例、ゆるキャラを商店街再生に活かす
脱ないものねだり──斬新な企画は、既にあるものの組み合わせ
第3章 B級グルメ商店街の罠
「B級グルメ商店街の罠」と「B‐1グランプリの罠」
ケース⑥ 女性の感情に無関心なオヤジのデータ絶対主義の罠 富山県高岡市の商店街
データ絶対主義の弊害
高岡コロッケと宇都宮餃子の違い
なぜコロッケ購入量が多いかを「考えることが重要」
「そんな話、聞いたことない」は、無関心の結果
「売れた」と「売った」の違い
負の物語を、正の物語に編集
ケース⑦ B‐1グランプリの罠 愛県今治市の商店街、静岡県富士宮市の商店街
やきとりを愛する今治市民
やきとり店数日本一はイノベーションと起業の成果
やきとり店は夜の顔だから、昼はシャッター商店街
B‐1グランプリの罠
賄い料理と比較すると、B‐1の特性が見える
B‐1で「勝てる料理、勝てない料理」
ファストフード化を助長するB‐1
B‐1で、豊かになったのは誰?
戦略とは「勝てない土俵では戦わない=勝てる土俵を探すか創る」
「地域経済循環率、起業、地域コミニティ」の相乗効果
第4章 商店街を利用しない公務員
公務員は、顧客目線(市民感覚)と郷土愛が必要
ケース⑧ 再生施策は「理論の美しさ」でなく「行動に繫げる」ことが重要 マイカー通勤ありきで「酒は飲まない、商店街に行かない」公務員
マイカー通勤ありきが、商店街を衰退させる
1本100円の2Lウーロン茶を、お酌しあう公務員
「理論の美しさ」でなく「自ら行動する」ことが重要
役所の職員食堂で、炭焼きバーべキュー
公務員の昼食と懇親会は、商店街を使いなさい
公務員は、公共交通で通勤しなさい
なぜ買物用の時間貸し駐車場が、平日は月極めに転用されたか
自治体の常識「自治体固有の風土」は、市民の非常識
なぜ自治体の中高年男性は、能力と意欲が低いのか
モチベーションは自分で高める
公務員と議員の事前準備なき視察は、税金と時間の無駄
公務員と議員は、身銭を切って「顧客目線、市民感覚」を感じとれ!
エスノグラフィで、新たな仮説を得る
横石さんを真似るべきは誰?
ケース⑨ 役所仕事は、公開すると、市民感覚に変わる 実録「千葉県商店街あり方検討会」委員会
委員会の鍵は、見える化と人選
「自治体は、もっと顧客目線をもて!」が新聞の見出しになる理由
支援する側と支援される側にだけ意見を聞くから、成果が出ない
婦人部と青年部を下部組織化する弊害
顧客は、箱物建設やイベントなんか期待していない
リピート客をつくる5つの方法
第5章 意欲が低い商店主
商店街問題は、意欲が低い商店主を3つに分けて考える
ケース⑩ 意欲が低い商店主も救済する護送船団方式支援はやめよう 実録「顧客インタビュー、商店主対象の講演会」
商店主の想像以上に、顧客は繫がっている
成功事例の猿真似は、まるで出会い系サイトのコピぺ・メール
単身者と高齢者を標準顧客と考える
パレートの法則──できが悪い80%をどうするか?
20の意欲ある商店主が、小さな形で取組を始める
試行錯誤を繰り返して、取組を進化させる
ケース⑪ 金融商品と化した商店街に、自治体は課税とテナント管理を 太田市南口一番街、鹿児島市天文館
商店街を金融商品と考える困った人たち
シャッター商店街は、節税策に使われる金融商品だった!
シャッター商店街を再開発する前に、テナント管理が必要
不動産オーナーが私益を追求すると「まちは滅びる」
自治体が商店街にすべきは救済ではなく、課税とテナント管理
まちを守るために、商店街の「再生策は利用者が創る」
第6章 再生戦略①「シェア」で、雇用・起業を創出
商店街を再生する3つの戦略、3つの人的特性
なぜ空店舗対策事業を使った起業は失敗するのか
売上高=顧客数×顧客単価──顧客数を増やすか、顧客単価を上げるか
商店街の再生は「顧客数を増やす」ことに尽きる
効率、高級、交流「3コウ戦略」
趣味で繫がる顧客と商店主の絆は強い
ケース⑫ 女性4人の異業種な起業家が相互に貢献しあう協働経営 東京都深川資料館通り商店街
人の繫がりを強化できるシェア(協働経営)
洋菓子が、他の事業と相乗効果を生む仕組み
ギャラリーが、他の事業と商店街に貢献する仕組み
シェアの基盤は、3つの人的特性にある
重要なのは「何をやるか」ではなくなく「顧客目線か」
シェアは「女性の社会参加、自立」を促す
第7章 再生戦略②「地域経済循環率」を高めて、第一次産業と共生
売上「額」から地域経済循環「率」へ
スローフード最大の障壁は、ファストフード文化
ケース⑬ 地域再生の鍵は売上額でなく「地域経済循環率」 愛県宇和島市の地域体感カフェ五感
多様な地元市民を繫げる場「日本版バール」を創ろう
顧客の行動を観察
ソーシャルメディアは「宣伝」でなく「コミュニティ」目的に使う
農業と飲食業が共生する湯布院モデルの応用
第8章 再生戦略③趣味を媒介に「地域コミュニティ」を育成
何をやるかは、いくらでも応用できる
ケース⑭ 自分のコトと顧客が感じるガーデニング 福岡県久留米ほとめき通り商店街
「商店主が売りたいモノ」から「顧客がしたいコト」へ
ガーデニングを顧客に任せて、集客に成功
地域コミュニティの鍵は、自己裁量
コミュニティを広げるには、コミュニティを入口にしない
ケース⑮ 本を媒介に、老若男女が交流できる場「サードプレイス」を創る 千葉銀座商店街、袖ヶ浦団地商店街
顧客に「ここは私のサードプレイス」と感じてもらう
公立図書館との差別化を、商店街は大型店との差別化に応用
美しい理論より、行動が先
交流の基本
地域の特性に応じた運営
サードプレイスの創り方
ブックカバー広告を、商店街再生と雇用創出に繫げる
ひきこもり、高齢者の社会参加を促す