地域に希望あり まち・人・仕事を創る
(
大江 正章 )
◆地方消滅と名指しされた村を「守る側になる」と増えたIターン・Uターンの移住者。地元合意に立脚してプライド高き商店街を再生した、まちづくり株式会社。自然エネルギーや有機農業で半農半Xを推し進めるビジネスマインドのNPO――経済成長よりも共感に軸をおく人々のチャレンジは止まらない、その最新の現場報告。
◆「地方創生」の掛け声より早く、魅力ある地域を創ってきた取り組みがある。山村の可能性、有機農業や自然エネルギーによる循環経済、復活した商店街、「消滅可能性一位」の村へ向かう移住者、協働の場を拓く地元の人材―地元愛と環境共生型のビジネスマインド、そして「豊かさ」の新しいモデルの現在を丁寧にルポ。
目次
はじめに
序章 移住が増えてきた「消滅市町村」第一位の村──群馬県南牧村
増田レポートの衝撃と誤り
年少人口率も高齢化率も日本一の村
村の将来を若手中心で考える
移住者が増えてきた
昔のままの姿に魅せられて
環境循環農法で野菜を作り、文化を守っていきたい
都会にしかないものは、何もない
増田レポートは乗り越えられる
動き出した自治体行政
変化が見えてきた
第1章 山村に希望あり──島根県邑南町・旧弥栄村・旧柿木村
女性と子どもが輝くまちづくり
A級グルメのまちづくり
耕すシェフと地域おこし協力隊の活用
移住者への手厚いサポート
トップランナーの課題
山村の暮らしに惹かれる若者たち
暮らし型有機農業と産業型有機農業
生き方志向と農業志向
兼業起農の意義と挫折
有機農業の村づくり
半農半Xが地域を支えていく
有機農業は環境保全型農業の延長ではない
農林大学校に有機農業専攻を設置
半農半Xを応援する
GNPからGLHへ
第2章 自然エネルギーが地域を開く──福島県会津地方、岐阜県石徹白地区
自然エネルギー電力会社の設立
基本ソフトを書き換える
一年半で合計二・五四MWの太陽光発電所が完成
積雪への対応
想いがつまった公共的株式会社の経営
一歩後退した小水力発電
手作りの水車でのライトアップから
事業の多様化と小売りのイメージ
人口が半世紀で四分の一に
マイクロ水力発電を活かした地域づくり
小水力発電所を運営する農協をつくる
成功のポイント
地域づくりの課題
第3章 漁業者とNGOの協働で地域を結い直す──宮城県旧北上町、福島県相馬市
死者・行方不明者は人口の約八%
漁協主導で復興へ
株式会社で販売まで手掛ける
協業化は広がるのか
地域漁業を誰がどう担うのか
NGOが果たした役割
模索しながら活動を続ける
被災者が被災者を支援する
それでも前を向く
リーダーの模索
NPOを基盤に多面的な活動
第4章 地域再生の柱としての商店街──香川県高松市、宮城県丸森町大張地区
殺到する視察者
老舗商店街の劇的な衰退
元凶はバブル
土地の所有権と利用権の分離を実現
街区ごとのコンセプトと仕組み
おとなのファンシーショップはわずか五坪
ハイレベルな自治会立診療所
地場産食材の適正な流通
商店街の自給自足
ここで暮らせて本当によかった
再開発事業への投資と効果
これからめざすまちづくり
中心市街地の活性化は農地の再生でもある
住民の七割が出資した「共同店」
売り上げは三割減でも、店はなくせない
第5章 NPOが創り出す、ゆうきの里──福島県旧東和町
地域を担う主体
放射能に対峙
土の力で放射能を抑え込む
自給的農を保証し、生きがいを創り出す
複数のリーダーたち
キャリア官僚からの転身
震災直後に来て農業で自立へ
半農半農家民宿
新規就農者をみんなで支える
震災から自力で立ち上がる
福島有機ネットの役割と意義
NPOと行政の協働
ゆうきの里の課題
第6章 有機農業と地場産業の連携による地域循環型経済の誕生──埼玉県小川町
有機農業の意義と現状
安定した有機農業の確立と新規就農者の増加
地元の米で造るから地酒
小規模農家を守る価格で大豆を買い上げて豆腐を作る
集落への広がり
企業版CSAの実現と集落皆有機の達成
町内での有機野菜の流通ルート
むらとまちを結ぶコーディネーター