里海資本論 日本社会は「共生の原理」で動く
(
井上 恭介、NHK「里海」取材班 )
◆里海=「人が手を加えることで海を健康にし、豊かにするメカニズム」。瀬戸内海の再生方法を指す。ムダとされたものが「ここにしかない生き方」を産み、人間以外の命もつなぎ直し、経済も暮らしも再生させている!!
◆「地球の限界」を救うモデル。それは、瀬戸内海の“里海”にあった。ムダとされたものが「ここにしかない生き方」を生み、人間以外の命もつなぎ直し、経済も暮らしも再生させている。SATOUMIという瀬戸内海生まれ、日本発の概念は、いま世界中で注目を集めているのだ。40万部突破の『里山資本主義』取材班が日本の未来を更に拓く!!
目次
はじめに──「里山資本主義」から「里海資本論」へ
海をよみがえらせる「里海」
海に種をまく漁師たち
大都会で「里山志向」が爆発している
都会も田舎もなくつながるボーダーレスな時代がやってきた
さらに一段上の「懐かしい未来」へ
資本主義のどんづまりに登場する「里海資本論」
一九世紀の資本主義のユートピアも「里山・里海」だった
第一章 海からの地域再生──古き筏が瀬戸内海を変えた
瀬戸内海を代表する「里海の装置」
カキ筏は「高度経済成長の産物」である
瀕死の海
カキ筏が「瀕死の海」を回復させた
カキの恐るべき浄水能力
宮島水族館が気づいた「楽園」
カキ筏の上は絶好の釣り場
そこにある「竜宮城」
自然のままより海を豊かにする「里海の営み」
カキ漁師は広島湾をさまよう
カキの稚貝の「最強軍団」をつくる
第二章 「邪魔もの」が二一世紀の資源──「里守」が奇跡の海を育てた
世界の里海の頂点 日生
水中の森は海賊の海にも広がっていた
瀬戸内の一人の漁師は気づいていた
二人三脚のプロジェクト
「ごみ」だったカキ殻が局面を打開した
底抜けに明るい漁師たちの港
「壊すのは簡単だけど元に戻すのには時間がかかる」
復活してきた「つぼ網」の漁
アマモの森に分け入る
「里海資本論」の経済成長
アマモを間引く
昔ながらのサウナ「石風呂」
アマモは優秀な肥料だった
里海の肥料は確かに植物を元気にする
「流れ藻」を畑にすきこむ島
竜宮の乙姫の元結の切り外し
中間総括 「地球の限界の克服」という課題──マネーとは異なる豊かな解決策を
「里海の作法」
「縄文は爆発だ」
「巨大定住集落」ができた「自然と結ぶ関係の深さ」
「地球の限界をどう克服するか」を迫られた世界
「マネー資本主義」による解決策
第三章 「SATOUMI」が変える世界経済──「瀬戸内海生まれ日本発」の概念が広がる
おまえは「漁師の召使い」か
「漁業とは海のおこぼれを頂戴する産業である」
人間くさいつながりが「里海の思想」を育んだ
結びつきのきっかけは互いに認め合う「骨のある人間」
「人脈作り名人」
世界の常識は大きな転換点を迎えていた
各国で広がる「里海の成功体験」
フランス人も「里海」に惹かれる
さらに進化する「二一世紀・瀬戸内海の里海」
第四章 〝記憶〟と〝体験〟による「限界」の突破──過疎の島が病人をよみがえらせる
二一世紀の最先端地、弓削島
「しまでCaféで昼食を」
島の実力「てんこもり」
「お年寄りの施設」も最先端
「何もない島」こそ「最高の施設」だった
陽だまりの散歩道
「ここだと名前で呼ばれるんです」
挫折した者だからこそできることがある
「よいしょ」の大合唱
若者もお年寄りも生き返る島
一軒残った帆布工場が島を変えた
綿花でどんどどんどん広がる人のつながり
懐かしい感触と色は島の記憶を呼び戻す力
瀬戸内を飾る白い花景色
「白い風景」の記憶を次世代に刻む
海からの「おすそ分け」
第五章 広域経済圏となる「里海」──大都市でも「里山」「里海」はできる
恐竜博物館で子どもたちを出迎える「虫」
よみがえる「生きている化石」
「こんなに動かない動物を見たことがない」
結局一番知っていたのは「里海の漁師」だった
野生のスナメリを追う
還ってきた生き物
カキの季節がやってきた
各地に、一般市民に広がる「里海」
里山と里海がつながる
広域経済活性化 広域環境問題解決としての「里海」
能登の「田舎時間」に魅せられる都会人たち
東京でもできる「里山」
最終総括 里山・里海が拓く未来──有限な世界で生命の無限の可能性を広げる
都会の住宅街で復活するせせらぎ
最新技術で「小川を復活」させることができる
イミテーション、フェイクから本物の時代へ
石見銀山のグローバリズムとボーダーレス
里海・里山の基本をなす作法は日曜夕方の「渋谷発の私鉄の中」にもある
世界の共鳴と日本からの発信
自然はまだまだわからないことだらけである
有限な世界で、生命の無限の可能性を生む
おわりに──わたしたちは、生きものである
解説──ささやかな力の結集に信を置く社会へ(藻谷浩介)
『里山資本主義』の焼き直しではない、新たな『里海資本論』
「里山」は入り口、「里海」はゴール
「そこに内湾があったから」三大都市圏はできた
日本の三大都市圏こそ、未来の「里海」復活の主舞台だ
一神教対八百万の神々、この原理的対立の先に未来がある
一つ一つは微力な主体の相互作用だけが、均衡を回復する道筋である