地方創生の正体 ――なぜ地域政策は失敗するのか
(
山下 祐介、金井 利之 )
◆「地方創生」で国はいったい何をたくらみ、地方をどう変えようとしているのか。国はこれまで自治体を様々な手段で手なずけてきた。ここへ来てさらに「選択と集中」の効率至上主義の論理で、地方を侵略しようとしている。住民は、そして自治体はこの動きにどう立ち向かっていけばよいのか。気鋭の社会学者と行政学者が、地域政策は失敗の歴史であったことを検証。地方創生から震災復興まで、地域社会救済という名目でなされる国策の罠を暴き出し、統治構造の病巣にメスを入れる。
目次
はじめに──失敗の連鎖から抜け出すために
第1章 「国─自治体─市民」の構造を問いなおす
1 「地方創生」で自治体は困り果てる 金井利之
山に登ったら何が見えるか
「地方創生」とは何か
ばら撒きとしての「地方創生」
できるだけ逃げる
幸せは、国から歩いて来ない
国の後出しじゃんけん
ヤレヤレ詐欺被害
決然とした異論か、適当に受け流すか
勝ち目のない試合
発想の転換を
人間の数え方を変える
2 「震災復興」で何が起きているのか 金井利之
計画はなぜ必要か
計画は誰のものか
内発的なアイデアの重要性
失敗のパターン
無理やり一つにまとめない
住民の強い思いを計画に
まちのイメージ
住民が活を入れる
3 「地方創生」は地域への侵略である 山下祐介
選択と集中、競争、淘汰
しごと創生と地域のインフラ外し
経済論理が貫かれた「地方創生」政策
メガソーラーに追い出される牧場
経済的自立は経済的依存でしかない
人口や経済以外の評価軸
中央が地域を侵略していく
協働の力、自治の力
第2章 いかにして地域政策は失敗するのか──原子力発電所事故から見えるもの
1 国と地域はどのようにズレていくのか
前提を誤った政策
ゆがんだ政治主導
復興過程の地域性
ある町の方針転換
「現場」の意味
2 県と地域はどのようにズレていくのか
県庁の立ち位置
「出向」職員の存在
会議の仕方
合意調達の「技術」
3 市町村と地域はどのようにズレていくのか
役場と職員の現状
議会の暗闘
避難先での住民
第3章 地域にとって国家とは何か
1 アシンメトリー(非対称)としての権力
新しい事態とは何か
「何も変わっていない」という出発点
震災復興と「地方創生」
復興予算二六兆円による転位
構造と現象
力に差のある権力関係の構造
2 国策の構造
国策であることの意味
公共事業の祖型としての災害復興
公共事業の不可能性
競争の質の変化
現状維持をめぐる競争
3 国をどう考えるか
国の正体
国の意思はどのように決まるのか
地域間格差の是正という夢
地域に押し付ける時代
東京育ちによる地域政策
4 特定財源主義による統制
復興政策の推移
特定財源主義への変化
責任をなすり付けるための競争
意思決定なき疾走
第4章 市民にとって、国家にとって自治体とは何か
1 多元的バランス構造の意義
自治体は誰のためにあるのか
住民という概念
権力は分けておく
国家性悪説
地獄への道は善意で敷き詰められている
毒をもって毒を制す
ブレーキとしてのコンセンサス
自治体消滅
2 依存の構造
国家統治の失敗
失敗しても進み続ける
依存のシステム
3 科学技術と国家
統治技術としての科学
科学技術は「やめられない」
権力と工学との関係
工学的技術のサステイナビリティー
学問は自己回転していく
研究者と政治家の立場が逆転する
4 ガバメントと共同体
なぜ住民は立ち上がらないのか
なぜ自治体は闘わないのか
移植される社会
ガバメントがなくなれば社会は死ぬ