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家庭生活新体制を目指す主婦指導の全国的展開(3)

 私の家は莫大小メリヤス製造の家内工業でございます。家人が多く、それに小さい古い店でごたごたが多く悪いことが四拍子も五拍子も揃っているので、ややこしいこと忙しいこといつも後から後から追いかけられているような思いで暮らして参りました。まことにこんな家にこそ予定生活が必要で、何となく家も片付かず毎日愚痴をこぼしておりましたが、講習会で習ったがらくた整理の日割を作ってから家の中が一尺ずつ広がっていくような気がしてとても楽しい。この分なら二、三箇月経ったら延坪三十五坪の家が四十坪にも使えると思う程でございます。商品倉庫も整理日に手をつけてみましたらシャツの片袖のないのや大きな穴の開いたのや裁ち損ないなど沢山積まれておりました。これは今までとて整理をしたいと思っていたのですが、ついそのままになっていたのを予定生活で生み出した時間でこれを為し遂げることが出来まして、そのお金で債権を買い十分の三は慰問袋にということに定めました。新体制は限りある時間を、決められた広さを、より以上に有効に使うことであると先生のどなたか仰っていましたが、私もその域に一歩踏み出したようで嬉しく思っています。

 こういう感想文が来ております。

 なおこのほか家計の問題では市から出した家計簿をつけるものが三万余に及んでおります。予算を立て家計簿をつけて暮らすようになって主人の浪費も止み、すべてに節約出来て貯金が倍になったというようなこと、予定を立てて時間を上手に使うことでは、家中に時間の観念が出来、一家総動員も出来るようになり、生産や公のために使う時間も出るようになった。それから子供の教育問題では子供の生活が変わって来たことや、一銭買いと言って工場街などでは多いものは日に何十銭も使い、そのために子供の心身をどんなに損なっていたか分からないですが、それも止むようになりました。食事の問題では、勤労者街でもまた住宅街でも憂うべきことが多かったですが、正しい食事ということに目覚め、今までのことを考えると恐ろしいようであったなどとの感想も聞かれるようになりました。衣服の問題でも不用品交換会などを実際にやってみて、邸宅街である天王寺方面においてこの時代の衣服に対する問題をどう解決すべきかをその人達もこうした実際のことがよく分かって下さったのであります。何よりも喜ばしいのは隣組での協力のことであります。隣組が本当に一つになることが出来て共同炊事、共同畑、共同洗濯、共同託児というようなことが各隣組でだんだんと実行に移されてきたことであります。人と人とが取り合うことによって、一人では出来なかったことも解決され、希望の途もあたえられるのでありまして、真の一億一心、家族日本の人情もここから養われることと思うのでございます。こうした家庭も隣組もだんだんと生活が変わりつつあり、このことを素直に忠実に実行するものは、今の時にどう生活しなければならないかを心から分かり、こうした生活の中からこそ真の喜びも楽しみも希望も見出すことが出来、自分達の知恵も力も日々進歩していくことが出来るのだということを事実に通して分かってくれつつあるのでございます。以上は大阪市の実例でございますが、これを参考にし、また研究室ともして下さって、この運動を全国的に展開されますように願いたいのでございます。その方法について十分の研究が必要と思いますが、全国各府県を一地区として指導の大綱を作り市、町村自治体を実践機関として実務に当たらせるのがいいと思います。その他の点については建設案に掲げましたことをご検討戴きたいと思います。

東京産業報国会『大政翼賛会中央協力会議議事録抜萃:第1回』(1941)p162-181

※文章は読み易くするため適宜、旧漢字は新漢字に、ルビや送り仮名、仮名づかいなども訂しています。

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