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家庭生活新体制を目指す主婦指導の全国的展開(2)

 大阪市では家庭生活新体制を打ち立てるためにはまず主婦の指導からということを考えまして、そのために指導者綱を確立することに致しまして、各町会連合からニ、三名づつ選ばれた主婦代表五百名に対する指導者講習を行いまして、この人々から更に三千五百人の町会婦人部長を通じて各隣組世帯に働きかけているのでございます。こうした一般指導の外に特別指導の部門を設けまして、商店街、工場街、問屋街、住宅街、給料生活社外、勤労者街などそれぞれ生活の異なる地区を各区に一町会ずつ十五箇所に指定しまして、これを研究指導町会となし、特に研究的な指導をして、その結果を一般指導の上に役立たせる、謂わば研究室の役割を果たせることに致しております。この講習は月二回熱心に開いているのでございます。指導内容は衣食住、家計、子供の教育など生活の基礎の問題を取り上げて、国民生活精神と良き生活の工夫と技術を順次徹底せしめるように十二箇月に割当てて一箇年を通じての指導項目と致したのでございます。以上の指導者としましては、適当な人々を市の家庭生活指導員として委嘱し実行を通した指導を目指しているのでございます。次にこの両方面の運動に対する大きな役割を果たしているのはラジオの前の主婦常会でございます。これは毎月の実行項目について大阪中央放送局から市の家庭生活指導員が放送しまして、これを全市の隣組で組長の夫人が集まって聴き、そのことについて自分達の生活を検討し反省しいろいろな申し合わせをして実行に移すことになっております。市ではこの反響を知る為に二回にわたり全市隣組からこれについての感想文を募集致しましたところ、一万四千通程の熱心な感想文が集まり、また実地にその様子を見ることによりましても、その効果のどんなに大きいかを知る事が出来るのであります。以上述べました研究会、講習会、ラジオの前の主婦常会を教本としましては、毎月の実行項目を分かり易く解説した家庭生活新体制叢書そうしょを毎月十二万部刊行して、これを全市の隣組に配布し回覧にしているのでございます。これもお手許にお配り致しておきましたからどうぞ後で御覧下さいませ。このほか研究指導町会における講習会では幼児を預かり特別の訓練を受けた娘達が市の幼児生活指導員として幼児の生活指導をやっております。このことも非常に喜ばれ、また大切な問題で幼児の教育について、また今問題になっております青年子女の育英について大きな意義を持つものであると思っております。

 大体このように実施し進行しているのでありますが、実際に当たって各種各層の生活の実情がはっきりすればする程、この運動がどんなに目下の急務であるかをまた強く感じさせられるのでございます。そしてそのことは一朝一夕に完全な成果を収めることは困難で多くの努力と忍耐と工夫をもって当たって行かなければならないことも強く思わせられるのでございますが、主婦達は一般に非常に熱心にこれをやり遂げようという熱意があり、こうした指導を待ち望んでいたという実情が見えるのでございます。また実施した結果がむしろ勤労者街、工場街などに好成績を収めているのを見ても、どんな階級にもこのことは出来ていく確信を得たのでございます。大阪は殊に実行力に富む所で、この結果も直ちに実行に移されるものが多く、各隣組に涙ぐましいばかりの実例を見るのでございます。熱心に寄せられたる感想文の中から一つを読んで皆様にお聴きを戴きたいと思います。

東京産業報国会『大政翼賛会中央協力会議議事録抜萃:第1回』(1941)p162-181

※文章は読み易くするため適宜、旧漢字は新漢字に、ルビや送り仮名、仮名づかいなども訂しています。

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